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白昼夢のように。

02 11, 2019
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如月 月齢6


「もう春です」


数日前そう束ね綴った言葉の上へと、雪が降り重なっていく朝。


いくら季節が巡ろうとも、突然届くメッセージのように、雪は私の内に舞い戻る。


一瞬にして、景色は白昼夢のように消え去る。
一瞬にして、景色は元通りの日常を取り戻す。

けれど、覚めない夢があってもいいじゃないか、と目を閉じれば、白昼夢は続く。


もう少しだけ、夢をみていたい。
そう思わせる朝だった。





冬からそれ以上の返信はないまま、きっと今年も春はやってくる。




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静かな正月に。

01 02, 2019
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睦月 月齢25


年末、雪が降った。


落葉樹の枝々のひとつひとつの存在を、常緑樹の葉々のひとつひとつ存在を、丁寧になぞるかの如く、雪が伝えてくる。
朝日が広がりはじめる前の山を眺め、「今年も終わる」と思った瞬間、「今日が始まる」と言葉を塗り替えた。



手の届く範囲にある小さな幸せのひとつひとつを心から大切にすることが出来るなら、それ以上を求める事もないだろう。
流れゆく風や光の行方を知る由がないならば、ただ目の前の気配を眺め、余韻の痕跡を指なぞるだけで良い。

景色が私に何も求めてはこないように、私もまた、目の前にあるものに何も求めず、ただ共に在るだけで良い。

それは何も難しい事はないと実感した年の瀬だった。






新年、晴れ渡った。


今年は今まで無我夢中でやってきたことに白黒つける年になる。どう転ぼうが、自分の肝は座っているだろうか。
それを試されるのだと想っている。

さて、どうでるか。 恐くもあり、楽しみでもある。




今日は暖かく、ウトウトゆったりと、時間が流れてゆく。黒猫のヤブさんも白いソファーの上に丸くなり、じっと時を眺めている。
時々、夫に声をかけては、すぐにそれぞれの世界に戻る。時々、本の世界に入り込んでは、すぐにこちらの世界に戻る。を、繰り返している。


とりあえず今は、この静かな正月を慈しみたい。


今年も良い年にしたいと願いながら、森の音を聴いている。




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花に触れる時も、鹿に触れる時も。

09 18, 2018
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Clematis terniflora

長月 月齢7 


腕を伸ばす。
触れる。

ただそれだけのことなのに。


触れそうで触れられない。

伸ばした腕の行き場を失う。

触れられない何かと、触れてはいけない何かが、息をのんで見つめ合っていた夜の出来事。




山に生きる野生の鹿に触れることが出来たなら。
そんな話をかつて山仲間たちと良くしたものだ。

ところが、いざその時が訪れると、私は触れる事が出来ない。
それが何故なのか、自分でもわからない。



体勢を取り直し闇に消えてゆくその姿を、見えなくなって尚見送くっていた。
罪悪感を抱きながら。




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あの夏の夜に出会った鹿を思い出しては、胸が痛くなる。


あの子に出会った場所は今、センニンソウの花が満開だ。


花に触れる時も、鹿に触れる時も、同じくありたい。
命への尊厳に触れる心持ちで。



センニンソウの花が散り、銀白色の羽毛が夕暮れの柔らかな光に照らされる姿が思い浮かぶ。

花を見つめながらも、その次の季節を感じている。





私の中に、センニンソウが息づいている。
私の息に、鹿の呼吸が重なっている。


私が私となり、と同時に、私が私でなくなってゆく。




歳を重ねるとは、そういうことなのかもしれない。






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暴風雨。

09 04, 2018
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長月 月齢24

風が生ぬるい朝。

急いで片付けを済ませ、ルーペをポッケに放り込み、カメラを掴むと急ぎ足で家を出た。

台風がやってくる。その前にどうしても会っておきたかった花があった。雨が降り出すまで、と心に決めていた。

空気が肌にまとわりつく。シャッターも重くなる。目当ての花までの道のりで、あれやこれやの薬草や実が誘惑してくる。

だもの、「先を急ぎますので」と断りきれない。
なので、花まで中々辿り着けない。
なぁに、今日に限った事ではない。
なのに、「今日に限って、、」と思ってしまう。

「仕方がありますまい」と雲の流れを確認しては足を止める。


肝心の花に辿り着く頃には、風が強まり花が大きく揺れ、ピントがぶれて撮れやしない。

ひとつ大きく深呼吸。

踊る花と呼吸を合わす。私が揺れる。そうしているうちに、写真など、もうどうでもよくなってしまった。
するとポツリと雨が降り出し、我に返る。


「来る」


雨で濡れた吊り橋を渡り、家路に向かった。吊り橋を渡り切ると、そこだけ乾いている地面があった。モミジの樹が傘になっているのに気づく。その傘の下で雲が急速に流れゆくのを眺めた。

空は、劇的に変化していった。

歩き出そうとした時、そのモミジの袂に人が立っていて、同じ様に空を見上げているのに気がついた。


足元には、未成熟な銀杏の実が既に転がっていた。

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窓際に座っていると、空を飛び交う影が無数に見えた。鳥の群れかと思ったが、風に飛ばされた森の木の葉たちだった。

それは突然起こった。

この窓から見える、一番高い樹があり、暴風に大きく揺られていた。
ベリベリと大きな音を響かせて樹は倒れ落ちていった。

あまりのショックに息を飲んだ。




夕方になり、嵐は一旦落ち着いた。猿たちが大騒ぎする声が響き渡っていた。
しかし、こうしてこの文章を綴っている間に再び雨足が強まり、時折空を明らめる光が走っている。

雷雨の音に耳を傾け、言葉を探しながら窓にかろうじて写るニワトコの葉が揺れるのを見つめては、パソコンに戻って我に戻る。を繰り返している。



夏が終わる。

めまぐるしい変化が訪れた今年の夏。台風のおかげで少し身体も心も調整する時間がもてたように思える。


雨風音のリズムを聴きながら。
風の音が恐くて、泣きながら力尽きたように眠りに落ちたという男の子が、朝まで目覚める事なく過ごせますように。

そう祈っている。


そして、私のひざで黒猫のヤブが丸くなって眠ったフリをしている。

嵐の日に。


あの樹がこの窓からの景色から消えていることを、私は明日の朝目覚めて改めて思いだすのだろう。


あの樹の事が、大好きだったと。





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粉雪舞う森の朝。

01 26, 2018
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睦月 月齢9

この森にも雪が積もった。

青空が広がりはじめた朝に、時折風が森を撫でていく。

気温の低さが雪を溶かすことなく、幹や枝葉にとどまった粉雪が風に舞う。
その舞いに合わせるように、光が刻一刻と変わってゆく。

ザワっと揺れる枝の音。
サワサワと舞う雪の音。

森が刻一刻と表情を変える。

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それは、不思議な雪だった。

降り出す直前まで、山の稜線近くに、くっきりと月が出ていた。日付が変わり降り出した雪は、今までに見たことがないくらい繊細な粉雪だった。

それは、不思議な雪だった。

サワサワと、粉雪が私に舞い積もる。全てに身を委ねるとは、このことだ。全く冷たくない雪だった。

あぁ、私は幸せだ。

とてもシンプルに、そう思った朝だった。


そして、今夜も雪予報。また明日も、目覚めるのが楽しみだ。


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Current Moon
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プロフィール

Coo

Author:Coo
森のある暮らしを綴ったフォトエッセイ。 裏高尾、筑波山を経て、現在 京都・比叡山にて。 森の事、野草や薬草のこと、森料理、日々のあれこれなど。 森の風があなたのもとにも届きます様に。

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