梅肉エキスを携えて。

07 12, 2017
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文月 月齢18

「今年は梅肉エキスを作ろうと思っているの。」

と宣言していたのにすっかり忘れていた。私は梅雨が好きだ。なのに、毎年体調を壊す。今年は意外にも元気だったので油断をしていたら、どうやら胃腸の調子がよろしくない。そういえば梅肉エキス作るつもりだったっけ、と思い出す。と、その頃には既に梅の実のシーズンが終わろうとしているではないか。そういえばあそこに梅の木が、と出かける。2、3粒しか残っていない。を、繰り返す。仕方ありますまい、と諦めた。


その次の日、森から遠回りして帰っていると、大きな青い梅がか細い枝を撓らせているではないか。嬉しくて心の中の私がはしゃぐ。足元に大きなキリの葉が一枚落ちている。その用意されたかのような偶然にまたはしゃぐ。ひとつ、またひとつと包んでゆく。なんて立派な梅だろう。

吊り橋を渡り、家に着く。瓶を探そうと夫作の蔓カゴにとりあえず入れた。妙にシックリきたので、その日は眺めるだけにした。

明くる日、梅肉エキス作りにとりかかる。梅肉を摩りおろす。茶巾で絞って液をとる。煮詰める。ただそれだけ。誰にでも作れる簡単な工程である。けれどもとにかく時間と労力がかかる。市販の梅肉エキスが少量でアホみたいに高価なわけに納得する。


鍋に入った梅の汁を混ぜながら煮詰める。煮詰める。煮詰める、、、を繰り返す。途中で不安になってくる。「液体が全て蒸発して何ものこらないのでは、、、」と疑いたくなる。「いやいや、きっと大丈夫、、、」と信じて煮詰める、を続けて小1時間ほど。徐々に色が緑から茶色、そして焦げ茶に変わり、飴状になってきてはじめて、全てが報われた想いでホッとする。



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1.5キロ程はあったであろう梅が、これっぽっちになった。梅肉エキスは一日に小指の爪ほども舐めれば十分。これでも暫くの間はお世話になれる。早速我が家にある一番小さなスプーンで掬って舐めてみる。

思わず顔中のパーツが一点に大集合する(かのイメージ)。体中を梅のエキスが走り抜けてゆく。この酸っぱさは梅干しの類を越えている。「効くーーっ!」と一声。美味しい。胃の辺りが暖かくなる。後味がなんとも爽やかに優しい。

私はかつて市販の梅肉エキスは味が好きになれなかったが、薬と思って舐めていた。だもんで続かなかった。梅肉エキスはキチンと保存されれば何年ももつらしい。5年くらいからまろやかになるという。とはいえ、この量では来年までに使い切ってしまうだろう。


梅肉エキスは昔から家庭の万能薬とされている。胃腸だけでなく、疲労回復、解毒作用、鎮痛作用、血行促進から風邪や喉の痛み、肌あれなどにも良いとされ、極少量を水で薄めて湿布すると湿疹や水虫にも効くという。インフルエンザ予防にも良いという話もある。つまり、年間通してかかりやすい諸症状ということ。民間療法なので治療というよりも予防として用いるのが良いかもしれない。


梅肉エキスを思い出しては舐め舐め。今年の梅雨は体調を大きく崩す事なく過ごせそうだ。



そうこうしていた先週末、「あれ?これは梅雨明け??」と感じた。私の中で梅雨明けのサイン(空気の変化というか何というか)があって、それが現れたのだ。「まさか、ちょっと早いでしょうに」と思うのだけれど、さてさて、いかがなものか。

夕べ、夫が入道雲になりかけの雲に出会ったと嬉しそうに話していた。夫が入道雲を追いかけて旅に出かける季節が始まるのも近い。

「京都の夏はまだまだこれから。本当に気をつけた方がいいよ」と話す人話す人口々に脅される今日この頃。いずれにしても、夏バテ防止の梅肉エキスがあるのだから、少し心強い。とはいえ、私にとって未体験の京都の夏に、ちょびっとビクビク、そしてワクワクしている。


さぁ、梅肉エキスを携えて、夏よ、ようこそ。







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Author:Coo
森のある暮らしを綴ったフォトエッセイ。 裏高尾、筑波山を経て、現在 京都・比叡山にて。 森の事、野草や薬草のこと、森料理、日々のあれこれなど。 森の風があなたのもとにも届きます様に。

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