吹雪の森を抜けて見えたもの。

02 19, 2015


如月 新月

その日は、こんな雨からのはじまりでした。

そして、森が容赦なく吹雪くのでした。

ゴーゴー
ゴーガー
ゴーォー

と、横に、斜めに、螺旋に、と乱舞する雪のライン。



「オカエリ」

黒猫のヤブさんは、冷えた身体にまとわりつくようにグルリと一周したかと思ったら、「私モ外ヘ出シテ下サイナ」とせがんでくる。

扉を開けると吹雪の端っこが舞い込もうとしてくるも、その合間をくぐって姿を消してゆく黒猫のヤブさん。


「ただいま」



数日前の事。

友人からメッセージが届いた。

その友人というのは、とある集まりで出会ったのだけれど、同い歳でやってきたことも、やりたいことも生き生きとユニークな人だった。
とてつもなく魅力的な女性で、会話の中心にいるような人だった。

会ったのはその時一度だけ。連絡を取り合っていたわけでもない。けれど、ある日突然メッセージが届き、「森に一緒に行きたい」と言われた。

当時、毎週のように誰かしらから連絡をもらい、プログラムとは別に個人的に一緒に森に行きたいとお誘いを受けることが続いていた頃でもあった。

私は他の人たちと同じ感覚でその意味を考える事もなくお返事して、会うことになったのだった。


彼女と過ごした森での時間は、他の人たちと変わらず、何をするでもなく散歩して、空の開ける場所でお昼を食べて、会話をする。ただそれだけだ。

だけれど、彼女との会話に、私は色々と考えさせられた。

その後暫くその話を頭の中でリピートしていたのを覚えている。

初対面の時の彼女に感じていたエネルギッシュで生き生きとした姿を思うほどに、その笑顔の裏にあるものを見せない彼女の強さをヒシヒシと感じた。

彼女は私に彼女が抱えてきた事を話している様でいて、それはそれだけにとどまらなかった。

命について、命の存在について、私はわかっているようで、わかっている気になっていることに気づかされたのだと思う。


彼女とはまた連絡を取り合うでもなく過ぎていった。

けれど忘れた頃に、森を歩いていると、ふと彼女の事が頭をよぎることが何度もあった。

なんとなく、そう、何となく。

連絡をとってはいけないような、そんな気さえしていた。。。



そのまま時は過ぎ、また突然、彼女から連絡が入った。

久々に会った彼女は、瞳の奥から輝いていた。
私は、あぁ、良かった、本当によかったね、、、と目には見えない何か(別段、スピリチュアルな何かというのでもなく、宇宙の中で地球がこうして回転している事実のようなもの)に、ありがとうを思い切り伝えたくて仕方なくなった。

別れ際、彼女を見送りながら、私は次の連絡を待つことにしていた。。。



数日前に彼女から届いたメッセージには、写真が添えられていた。

元々凛とした端正な顔立ちの彼女なのだが、その笑顔、立ち姿、全てが実に美しく、涙が出た。

彼女と最後に会ったあの日から、実は私にも目まぐるしく色んなことが起こっていた。

そして、今まさに、彼女の言っていた命の存在の意味と直面しなくてはいけない前日だった。

命は奇跡なのだと私に言葉ではなく教えてくれたのは彼女だった。
その彼女に、再び、私たちの命は、宇宙の欠片に過ぎないのだけれど、その事実ほど美しく尊いものが他にあろうか、、、と彼女の笑顔をもって、再び認識させられたのだった。


不安や恐怖に挑む勇気をもらった気が今はしている。


。。。。。。。。。。。。


吹雪の森を足早に抜けて重たい身体を引きずるように家に入り、濡れた髪を拭きながら、ストーブに火をつけ、暖かい飲み物を用意する。

ゴーゴー
ゴーガー
ゴーォー

が益々強まってきて、窓の外の森の景色が、見えないように目隠しされるかのようにベールに包まれてゆく。

少し身体を休めようとソファーに埋まり視界がぼやけてゆくと、例の写真の中で笑う彼女が現れた。

すると、彼女からメッセージが届いていた。

「、、、君を思うと、大丈夫って思えるよ。君の後ろに、沢山の命を抱きしめたおーーーきな森がみえるからかな。」と丁寧な言の葉たちは、そんな風に締めくくられていた。


あぁ、本当にありがとう。
森に帰ってきたよ。
それだけで全てOKだ。

私たちの後ろに広がる森がある。
だから大丈夫。

今日は新月。
新月は願い事をする日。
君のこと願うよ。
だから大丈夫、大丈夫。

益々楽しみだね、これからが!

そう思って、もう一度、深く彼女の事を思い描きながら、小さな祈りに似たものを森に捧げた。


ずぶ濡れで帰って来た黒猫のヤブさんは、ブルリっ!!と頭から尻尾までを振るわし雪雨粒を飛ばすと、再びストールにくるまり、ウトウトし始める。

吹雪の森で、一体君は何をみてきたんだい?



吹雪の後は、木々の枝に光る雫が何とも美しい夜でした。

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Author:Coo
森のある暮らしを綴ったフォトエッセイ。 裏高尾、筑波山を経て、現在 京都・比叡山にて。 森の事、野草や薬草のこと、森料理、日々のあれこれなど。 森の風があなたのもとにも届きます様に。

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