菜の花、思い出ゆらゆら。

04 15, 2015


卯月 月齢25

菜の花を摘みに、お気に入りの場所へ。



私は生まれてからずっと、赤城山の麓の小さな町で育った。

大学進学のため上京し、新宿駅であるものを目にし、大きな衝撃を受けた。

駅の中のお花屋さんで、菜の花が売られていたのだった。

菜の花といえば、野原や土手や畑の傍らに咲き、朝ご飯前に犬のジロコの散歩がてら摘みに行って、摘みたてを母がベーコンと炒めてくれて朝食を彩ってくれるものだった。


その菜の花が、ラッピングされて店先に並べられていたのが、何だか自分自身と重なった。

何だか急に怖くなったのを覚えている。

人の歩く速さや人々がぶつかり合っても無心に歩いている姿も驚きだったけれど、あの時の菜の花の事が今でも忘れられない。

(奇妙なもので、このお花屋さんで後に働く事になるのだけれど、、)

青菜が足りないな、と思って里へ菜の花を摘みに来て、そんな事をふと思い出した。




菜の花の香りは、独特。

花といってイメージする、爽やかだったり、甘い香りとは異なる。

もっとなんというか、、鼻腔に重たく残る感じ。

その香りは、イギリスで暮らしていた時のことを思い出させた。


イギリス南東部の小さな村にあるカレッジでhorticultureを学んでいた時のこと。

春になるとあたり一面の菜の花畑に所々で出会った。
あの独特な香りが立ちこめていた。

大喜びで摘んで帰り、キッチンで茹でていたところ、ドミトリーの他の住人たちがまさかね、という口調で尋ねてきた。

「それどうするの?」
「え?食べるの」
「、、、日本人何でも食べるね」(←その少し前に、フキノトウを摘んで食べていた。)

どうやら、菜の花は工業油用らしく、当時、農薬を沢山まいて育てていたらしい。

それを聞いても、日本の季節の味がとても恋しかった私は、ちょっと躊躇した後に食べたけれど、、、今思うと友人の忠告はきくべきだったなと思う。


菜の花は、私に春の思い出をユラユラと呼び起こさせる。


そんな菜の花が、農道や小川沿いに咲きほころんでいる。
車も犬の散歩も通らない場所を見つけた。


花の写真を撮っていたら、その香りにクラクラしてきた。



カメラを置いて、大地と背中合わせになった。



空が青かった。
とても澄んでいて、私の身体までも透くようだった。

土の香りが、かろうじて私を浮遊させずに引きとめてくれていた。



そうして見上げた菜の花は、
一輪ずつの鮮やかさを増していた。

初夏のような陽射しをバックライトに躍っていた。



食する用に必要な分だけ、
部屋に飾る用に少し、

歩き歩き、菜の花を摘みながら家路に向かった。


蜂や蝶にでもなったかのように、
あっちへフワフワ、こっちへビンブン。

春は、私を虫にさせる。


(次回、菜の花レシピへと続く。)

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Author:Coo
森のある暮らしを綴ったフォトエッセイ。 裏高尾、筑波山を経て、現在 京都・比叡山にて。 夫の樹さん、黒猫のヤブさんと私Cooこと久弥子、ふたりと1匹、森暮らし。 森の事、野草や薬草のこと、森料理、日々のあれこれ、など。 森の風があなたのもとにも届きます様に。

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