木五倍子インクでお手紙を。

12 08, 2015


師走 月齢26

「この実、めっちゃ美味しくない」

樹さんは実という実を片っ端から味見してしまう趣味嗜好があることを、以前綴りました↓
「たべられる きのみ」

気づくと口にしてしまっているので、止めようもありません。
が、時にそれが功を奏してビックリな発見に繋がる事もあるのです。

今日はそんなお話です。



それは先日、夫婦共々何かとお世話になっている「つくば環境フォーラム」の野村さんにこのあたりの森を案内をして頂いていた時の事でした。
野村さんは八郷にセルフビルドの素敵な山小屋を構えていらっしゃり、この人は本当に「森人」だなぁと感じさせる方です。


霧雨の合間を3人でプラプラ歩く中、フラッと後方から追い付いて来た樹さんが味見してみるように差し出して来た真っ黒な実。

見るからに美味しくはなさそうなのですが、、、

珍しく「まずい」と連呼しているので、「どれどれ、、」


「まーーずーーいーー!!!!」


私史上、イイギリの実と匹敵するほどの美味しくなさ。
二度と食べたくはないけれど、二度食べなくても忘れられない味でしたので、
もう食べなくても覚えてられるというのは、ちょっとホッとします。


「何の実だろう?」

その木を見つけて、野村さんがその木の事を紹介してくださいました。


「キブシだね」

キブシ、、、青い実の時しか知りませんでしたが、真っ黒になったキブシの実。

以前キブシの枝を火熾し道具に試した事はあるのと、実は染料になるということしか気に留めていませんでした。


キブシは、花の形から別名【キフジ】ともいうのだけれど、【木五倍子】と書いて、タンニンが多く、薬用や染め物などに使われていた【五倍子】(ヌルデにヌルデシロアブラムシが寄生してできる虫嬰(ちゅうえい、虫こぶのこと))が高級だった為、その代用にも使われたとか。
そこから名前の由来になったとも言われているという説があることを教えて頂きました。


「ヌルデの五倍子は昔お歯黒に使われたのですよ。それから、インクも作れるという話で。ということは、キブシからもインクが作れるということかもしれないのだけれど、、、」


ふむふむ、、、インク??
面白そう!!!!

ということで、インクの作り方も教えて頂き摘んで帰りました。

「早速作って報告しますね!」


次の日、早速色々と調べてみたのですが、ヌルデの五倍子やクルミを使ったインク作りはかろうじて見つかっても、キブシの実については見つからず、、、
五倍子の様々な歴史の方に脱線してしまい、結局は野村さんに教えて頂いたとても(とてつもなく)簡単な作り方を試してみる事に。

錆び釘を物置から探して来て、水を注ぎ、キブシの実をたたいてから入れる。

それだけ。

ところがどうでしょう、、、
すぐに色がこの通り変わりました。



「わぁ!すごいタンニン!!」

あの不味さの強烈さに納得です。

胃がキューーン!となる感じ。

ちなみに味を表現するならば、、、

「クレヨンみたいな味」

昨日山仲間が遊びに来ていたので、焚き火しながらその話をしたところ、
「、、、クレヨン食べた事あるの?」

あ、、、はい、、、幼稚園の頃ね、、、色の違いで味が違うのかなって、、、。

淡い思い出って誰にでもあるものでしょう?
そういうこと。




次の日。
既にかなり黒くなっていました。

このままでも良いのでは?と思いつつ、もう一週間寝かせてみると、この通り。

このままではサラサラしているので、調べて見ると、粘り気にアラビアガムを足すそうなのですが、そんなものは家にないので、
樹さんの本棚に使われる事なく飾られていたガラスペンを持ち出し、とりあえず試し書きしてみると、、、



書けるではないの!

一週間目くらいのインクは、どこか金色混じりのような美しく儚い色でした。
その後また一週間ほどしたら茶と微かに緑がかった黒に変わりました。

ヌルデの五倍子の代用となることがわかり、「木五倍子」の名前に相応しく、キブシが今まで以上に輝かしく想われます。



試し書きに、キブシさんにお手紙を書きました。
うむ、、確かに粘り気が少し足りないけれど、ペンの使い方に慣れてくれば書き心地まずまず。



感動です。

いつも面白い事を教えてくださる野村さんですが、こんな体験感動を与えてくださったことに本当に感謝です。



週末、野村さんのお誕生日でした。
野村さんに「木五倍子インク」でお手紙を書きました。

傾いた陽のシッポと、柔らかな暖色の光り美しい時間帯に。




「木五倍子インク」

次は誰にお手紙しようかしら。

私からお手紙が届いたら、キブシの色合いから、
この森の空気を感じてもらえたら。

ちょっと慌ただしい年の瀬、師走。
時間を見つけて数行ずつ書き足し書き溜めて送りたいと想います。


キブシさん、ありがとう。

樹さん、あなたの無闇に実を食べる趣味嗜好に時々溜め息るいていたことごめんなさい。
生死に関わらない程度にこれからもどうぞ。

そして、野村さん、教えてくださってありがとうございます。
森散歩というものが思い出以上になる体験。
そしてその体験が経験への架け橋となるって大切ですね。

森案内というものは、知識的なことを伝える場であるよりも、その森を愛してやまない想いが言葉にせずとも、意図せずとも、ジワジワと伝染してしまうほどの何かというのは、森を知るための何よりもの近道へと導いてくれる重要なことであり、組み込もうとして組み込めるものではない事である事を私は痛感しています。

それだけに、野村さんが私にギフトしてくれたこの経験という森のお土産は何にも代えられないものであり、真似出来ないものだな、、と想うのです。


けれど、私も私の経験から生み出される言葉や言葉以外のもので、森冒険隊の子どもたちといつかまた一緒に森を散歩する時に教えてあげたいと想います。


ありがとう。
また森で。


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プロフィール

Coo

Author:Coo
森のある暮らしを綴ったフォトエッセイ。 裏高尾、筑波山を経て、現在 京都・比叡山にて。 夫の樹さん、黒猫のヤブさんと私Cooこと久弥子、ふたりと1匹、森暮らし。 森の事、野草や薬草のこと、森料理、日々のあれこれ、など。 森の風があなたのもとにも届きます様に。

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