キノコで遺言。

09 08, 2016
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長月 月齢6




あれは夏の初まり頃だっただろうか。


樹さんは突然「キノコを沢山食べるんだ」と言い出した。

唐突すぎて、「キノコ、、ですか、、、」と私。

話を聞くと、「奇人はキノコを沢山食べているらしい」という。どうやら奇人になりたい願望があるらしい。


そもそも、あなたは十分変わっているので、その必要はないし、
そもそもそもそも、キノコを食べると奇人になるのではなく、奇人と呼ばれる人がたまたまキノコ好きだっただけじゃ、、、


と私は内心想いながらも、「はーい、キノコね」と次の日からキノコ料理を出し続けた。


(毎日出していたら、そのうち言わなくなるでしょう)

と思っていたら、残暑の頃にはキノコキノコ言わなくなった。


(シメシメ)

と思っていたら、秋の入り口になり、今度は私がキノコキノコになった。


(食べるためではなく、鑑賞のためだけれど)

というわけで、先週末、樹さんを案内してキノコをみつけに森へ出かけたのだった。




「わーっ!なにこれー!」と大はしゃぎの樹さん。


えぇ、えぇ、
このフォルム、この色合い、あなたも好きでしょうねぇ。へへん!


と自慢げにタマゴタケを紹介する私。

(私が自慢げになる意味がよくわからないけれど)



樹さんが食べてみたいと言い、3本ほど摘んで帰る事にしたらしい。

せっかくの機会だから、自分で調理してもらうことにした。



家に帰り、私は夕飯の支度をはじめていると、椅子の下に何故かタマゴタケが一本落ちていた。

ん?と思って手にしたものの、私は夕飯の支度を続けた。



一段落して「さてと、、」と樹さんにキッチンを譲ろうとして驚いた。

タマゴタケが入っている袋の中に、知らない毒々しいキノコが入っている、、、


一体いつ忍ばせたのよーっ!



「樹さん、これ、、、」

「あぁ、後で調べようと思って♬」


「キノコって胞子あるって知ってるよね?」

「ん?うんっ」

「これが毒キノコだったら、、、一緒に入れたらうつっちゃってるかもよーっ」


ガミガミ言いたくないんだけど、ガミガミ言っちゃうのよね、こういう時って。
でもすぐガミガミ言ってる自分に気づいて、

「言ってあげなかった私が悪いんだけど。言わなくてごめんね。」

と謝れど、樹さんは既にションボリ。


私は心の中では「もぉー、考えたらわかるでしょー、子どもじゃないんだからー」と呆れつつ、
私にとっては当たり前のことが、他の人にとっては当たり前ではないことも、
これ以上ガミガミ言い続けると、樹さんが鬼のように怒り出し、私が縮こまることも、
私は樹さんから学習している。



となると、ここからはフォローに回るしかない。


「しっかり洗ったら? 傘の裏の方まで(自己責任でね)」


味付けの仕方だけアドバイスして、後は任せる事に。

樹さんは「わーーっ!色が消えるーっ!」と無邪気に一喜一憂しながら調理し、ビクビクながらも食して満足そうだった。



念願のキノコが食べれて良かったわね。




で、終わるはずだった。


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夜更けて、私は次の日に会う予定になっていた友人にお手紙を書いていた。


樹さんは隣の部屋で寝転んで本でも読んでウトウトしていたのだろう。


「◯▲*##◉◎・・・」とムニャムニャ聞こえてくる。

「何?」と聞きに行くと、

「えぇーっとなー、青くてなぁー、キラキラしててなぁー、めっちゃ綺麗やってーん・・・」


寝言のように言っている。

どうやら、瞼の裏側に何やら写っていたらしい。


私はふと思い出した。椅子の下に落ちていたキノコのことだ。


(私、あのキノコを触った手、、、料理続ける前に洗ったっけ、、、?)


「へぇ〜、綺麗なんだー。いいなー。」


私はスススーっと部屋に戻り、急いで手紙の続きを書きはじめた。

そうして季節の挨拶とお礼のはずのお手紙は、「遺言」へと変わったのだった。


私は信頼のおける友人に伝えなくてはと思ったのだ。


・私も樹さんと一緒に、永遠に旅にいっても、これは心中ではないこと。
・私はいつか山羊農園をもちたいと思っているから、今はまだ死にたくはなかったこと。
・けれど仕方ないから、私も白州次郎氏のように「葬式無用、戒名不要」で、そして撒いてほしいこと。


お土産といっしょに手渡すはずの手紙だったけれど、
これを見つけた人が、その友人に送ってくれるように、封筒にキチンと住所を書いた。


ここまできて、私の心残りは山羊農園のこともだけれど、切手が手元にないことだった。


(見つけた人、ごめんなさい。切手買ってください。。。)




「明日、朝陽みれるかなぁ、、、」



そう思いながら私は眠りについたのだった。


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と、大げさに遊び心をくすぐって、日々のスパイスにしている我が家。

こうして投稿出来ているのだから、もちろん無事です。

キノコを食してどのくらいの時間で症状が出るのかはキノコによるでしょう。



猛毒で死ぬ場合も、一度目は大丈夫でも2度目が命の危険に繋がるとか、
すぐにあの世へゆくことになっても、「こ、このキノコがっ、、、!!!(ガクッ)」と後世に伝えられる時間を、キノコは私たちに与えてくれるとも聞いた事がある。


本当のところはどうかわからないけれど、素人がキノコ狩りをするのは慎むべきでしょう。


キノコ狩りをする時は、言うまでもなく「後で調べよう」キノコはまぜないこと。

キノコを残すためにも菌糸が森に落ちるように、ビニールや袋ではなく、収穫カゴを使う方が良いよね、とかも言われている。

キノコ界って奥深い。

キノコに限らず、わからないうちは手を出さない。大切ね。



けれどね、ここだけの話、、、


「こ、このキノコが、、!!」と後世に伝えられる役に、ちょっと憧れなくもない自分がいるのだけれど、、、


いやいや、いやいやー、ダメだよ、ダメダメ。



というわけで、
私ももっとキノコと仲良くなりたいので、暫くキノコと一緒にポコポコしようと思います。


さぁさぁ、みなさん、秋ですよ。



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プロフィール

Coo

Author:Coo
森のある暮らしを綴ったフォトエッセイ。 裏高尾、筑波山を経て、現在 京都・比叡山にて。 夫の樹さん、黒猫のヤブさんと私Cooこと久弥子、ふたりと1匹、森暮らし。 森の事、野草や薬草のこと、森料理、日々のあれこれ、など。 森の風があなたのもとにも届きます様に。

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