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暴風雨。

09 04, 2018
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長月 月齢24

風が生ぬるい朝。

急いで片付けを済ませ、ルーペをポッケに放り込み、カメラを掴むと急ぎ足で家を出た。

台風がやってくる。その前にどうしても会っておきたかった花があった。雨が降り出すまで、と心に決めていた。

空気が肌にまとわりつく。シャッターも重くなる。目当ての花までの道のりで、あれやこれやの薬草や実が誘惑してくる。

だもの、「先を急ぎますので」と断りきれない。
なので、花まで中々辿り着けない。
なぁに、今日に限った事ではない。
なのに、「今日に限って、、」と思ってしまう。

「仕方がありますまい」と雲の流れを確認しては足を止める。


肝心の花に辿り着く頃には、風が強まり花が大きく揺れ、ピントがぶれて撮れやしない。

ひとつ大きく深呼吸。

踊る花と呼吸を合わす。私が揺れる。そうしているうちに、写真など、もうどうでもよくなってしまった。
するとポツリと雨が降り出し、我に返る。


「来る」


雨で濡れた吊り橋を渡り、家路に向かった。吊り橋を渡り切ると、そこだけ乾いている地面があった。モミジの樹が傘になっているのに気づく。その傘の下で雲が急速に流れゆくのを眺めた。

空は、劇的に変化していった。

歩き出そうとした時、そのモミジの袂に人が立っていて、同じ様に空を見上げているのに気がついた。


足元には、未成熟な銀杏の実が既に転がっていた。

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窓際に座っていると、空を飛び交う影が無数に見えた。鳥の群れかと思ったが、風に飛ばされた森の木の葉たちだった。

それは突然起こった。

この窓から見える、一番高い樹があり、暴風に大きく揺られていた。
ベリベリと大きな音を響かせて樹は倒れ落ちていった。

あまりのショックに息を飲んだ。




夕方になり、嵐は一旦落ち着いた。猿たちが大騒ぎする声が響き渡っていた。
しかし、こうしてこの文章を綴っている間に再び雨足が強まり、時折空を明らめる光が走っている。

雷雨の音に耳を傾け、言葉を探しながら窓にかろうじて写るニワトコの葉が揺れるのを見つめては、パソコンに戻って我に戻る。を繰り返している。



夏が終わる。

めまぐるしい変化が訪れた今年の夏。台風のおかげで少し身体も心も調整する時間がもてたように思える。


雨風音のリズムを聴きながら。
風の音が恐くて、泣きながら力尽きたように眠りに落ちたという男の子が、朝まで目覚める事なく過ごせますように。

そう祈っている。


そして、私のひざで黒猫のヤブが丸くなって眠ったフリをしている。

嵐の日に。


あの樹がこの窓からの景色から消えていることを、私は明日の朝目覚めて改めて思いだすのだろう。


あの樹の事が、大好きだったと。





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Author:Coo
森のある暮らしを綴ったフォトエッセイ。 裏高尾、筑波山を経て、現在 京都・比叡山にて。 森の事、野草や薬草のこと、森料理、日々のあれこれなど。 森の風があなたのもとにも届きます様に。

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