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金木犀で桂花陳酒を。

10 14, 2018
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Osmanthus fragrans var. aurantiacus

神無月 月齢5

夜の薫りは濃い。
視覚が遠くまで効かなくなるせいか、夜の空気の重みがそうさせるのか、全ての薫りを深める。

ある夜の事。

帰宅途中、吊り橋を渡ろうとすると、フワリと甘く馨った。「あぁ、咲いたのか」と、足を止め辺りを見回せど、夜の帷に姿をくらましている。確かにこの近くにいるはず・・と目が闇に慣れるのを待つ事にした。

その瞬間、ポケットの中で携帯が鳴った。

「キンモクセイ」

ただ一言の短いメッセージだった。私は返信もせず、吊り橋を渡り家路を急いだ。


次の日、掃除をしていると、再びフワリと馨る。「窓が開いていたかしら?」と手をとめる。すると急に薫りが強まり、視界の隅にその花があることに気づいた。

金木犀が小さな薬瓶に生けてある。夫の仕業だ。

夫も夕べ、仕事帰りに吊り橋の袂で金木犀に気づいたに違いない。「いつの間に・・」クスッと笑った。



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カメラを向ける。横に置かれた薬瓶の蓋の中に落ちた、乾ききった金木犀の欠片に気づく。私には花よりも妙に愛おしく写った。


そして、生けた金木犀も萎んだ頃、「桂花陳酒を造った事があるか」と夫が聞いてきた。(そういえば去年は同じパターンで花梨だったなぁ・・)と思いながら、「ありますよ」と応えた。

花酒は焼酎漬けだと時間がかかるが、桂花陳酒のようにワインで漬ければ1週間もすれば十分試飲ができる。花を摘んで漬けるだけ。コツも何もない、と話した。

というわけで、今年は一緒に造る事になり、花摘みに出掛けた。

ところが、だ。

花が少しずつ集まってきた頃、夫が集めたものを見て、私は二度見した。そして、夫が花を摘んではいないことに気づく。聞くと、枝を揺らして落ちてくる花を集めたという。それは花の弾力を失いつつある花ばかりだった。

「花の役目を終えたものを使ってあげるのかと思ってた」と夫は言った。

時々、夫は私をハッとさせる。植物だけでなく動物への接し方を、夫は私なんかよりも遥かに感覚として知っている気がすることが多々ある。それは、その工程として正しいか間違っているかの話ではなく、薬草や野草を扱う者が次第に失いがちな、とても大切な心の話だ。

彼の無意識の言動は、私が野草や薬草、花や実などについて覚え初めの頃の感覚に引き戻すことがある。そして時に、私が「これはこうするものだ」と思ってやってきたことが、「その方法の他はないのか」という問いを投げかけられることが多々ある。

良き師をもったものだ、と私は内心思うのであった。

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近所をぐるっと散歩しながら少しずつ集めた。秋晴れの穏やかな散歩だ。
夫はその後、私の真似をして花を摘み始め、ブレンドすることにした。私は私の薬瓶に必要最小限の花を集め漬けた。そして場所を変え、夫は鴨川や銀月の庭の金木犀を集め漬け、計3種類の桂花陳酒が漬けられた。


実験である。



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それからというもの、夫は日々瓶を眺めては感動している。私も、瓶の中の小宇宙というか、手に届かない何かを瓶につめて隠し持っているような感覚にニヤケてしまう。

一週間が経ち、瓶を開けた。

ほんの一口ずつ。飲み比べ、味の違いが歴然としている事に驚いた。同じ日に同じ樹から摘み、同じお酒に漬け、同じ甘味を入れているというのに。

夫は私の造った桂花陳酒のまろやかさに驚き讃えてくれたが、私は、夫が漬けた野性味のある味の方が好みだと思った。


正しい、間違っているは元来ないのかもしれない。
大切なのは、そこに漬けられた季節そのものと、記憶の面影なのだろう。


金木犀の花が散ると、ここ京都は急に肌寒さがやってきた。紅葉も少しずつ始まり、モズの高鳴きから75日目の降霜を指折り数え、今年も秋が深まってゆく。




【金木犀の花の効能】
精神安定、リラクゼーション、炎症を鎮める、整腸作用、眼精疲労回復、解毒、利尿効果、食欲抑制効果(食欲を促す脳内物質「オレキシン」を抑制する)。

個人的には、風邪の引き初めの肩や首の凝り、凝りから来る眼球圧迫される感覚を和らげる弛緩効果を感じます。
*あくまでも個人的感覚です。


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Author:Coo
森のある暮らしを綴ったフォトエッセイ。 裏高尾、筑波山を経て、現在 京都・比叡山にて。 森の事、野草や薬草のこと、森料理、日々のあれこれなど。 森の風があなたのもとにも届きます様に。

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